憲法に定める刑事手続上の権利

概要  不法な逮捕・抑留・拘禁からの自由(33条、34条) 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いて、裁判官によって発行され、理由となる犯罪が明示された令状によらなければ、逮捕されない。また、理由を直ちに告げられ、弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留(一時的な身体の拘束)または拘禁(継続的な身体の拘束)されない。
 住居等の不可侵(35条) 住居・書類・所持品について、侵入・捜索・押収をするには、裁判官によって発行された各別の正当な令状がなければならない。令状主義の精神を没却するような重大な違法が証拠収集手続にあれば、その証拠能力は否定される(最判昭和53年9月7日刑集32巻6号1672頁)。
 拷問・残虐な刑罰の禁止(36条) 36条にいう「残虐な刑罰」とは、不必要な精神的・肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰をいう(最判昭和23年6月30日刑集2巻7号777頁)。
 公平な裁判所による迅速な公開裁判を受ける権利、証人審問・喚問権、弁護人依頼権(37条) 何人も、公平な裁判所による迅速な公開裁判を受ける権利が保障される。また、刑事被告人は、証人に対して審問する権利と、公費で強制的に証人を求める権利が保障されている。
 自己負罪・自白からの自由(38条) 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。強制・拷問・脅迫による自白や、不当に長く抑留・拘禁された後の自白は、証拠とすることができない(自白排除法則)。また、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされない(自白補強法則)。
 事後法・二重処罰の禁止(39条) 実行のときに適法であった行為や、既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。また、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない。
対象/前提  初めて日本国憲法の解釈論を学ぶ全学部の1年生を対象にします。入門的な講義ですので、受講にあたっての前提要件はありません。日本国憲法の解釈論についての専門的な講義ではありません。
キーワード 日本国憲法,法定適正手続の保障,不法な逮捕・抑留・拘禁からの自由,住居等の不可侵,残虐刑の禁止,公平な裁判所による迅速な公開裁判を受ける権利,証人審問・喚問権,弁護人依頼権,自己負罪・自白からの自由,事後法の禁止,二重処罰の禁止
作成者 信州大学 全学教育機構 柳瀬昇
協力者
親教材身体の自由
更新日2009年1月7日
注意事項
本教材は、平成18年度『現代的教育ニーズ取組支援プログラム』「教育の質保証プロジェクト」の支援により開発されたものです。
学習の留意点  初めて日本国憲法の解釈論を学ぶ全学部の1年生を対象とする入門的な講義です。日本国憲法の解釈論についての専門的な講義ではありません。日本国憲法の解釈論の基礎を約30時間程度で学ぶためのコースですので、解釈論上の重要論点について深く立ち入ることはできません。
 日本国憲法その他法令を引用することが多いので、できるだけ新しい六法(法令集)を手もとに置き、必要に応じて、参照してください。
教材群
  1. main憲法に定める刑事手続上の権利
  2. test理解度確認小テスト