量的、および質的異常を示す血清蛋白分画像

 血清蛋白分画動の判読は、各分画比とデンシトメトリーによる峰の形状によって病態を推測する。 主な代表的なパターンを示す。

(1)ネフローゼ型
腎糸球体基底膜による分子篩効果が著明であるため、低分子量の蛋白が選択的に尿中に排泄される。 したがって、著しい低蛋白血症であり、蛋白分画像ではアルブミンの著明な減少、α1分画の減少、 α2分画の著明な増加、γ分画の低下が認められる。
(2)急性炎症型
急性相反応物質と呼ばれる糖蛋白質( α1アンチトリプシン、ハプトグロビンなど)が増加することにより生じる。 分画像の特徴はα1分画、 α2分画の増加が認められる。また、多くの場合アルブミン分画、β分画、γ分画は減少傾向を示す。
(3)慢性炎症型
炎症が慢性的に持続するため、急性相反応物質の増加のみならず、幅広いγ分画像を示す多クローン性免疫グロブリンの増加が観察される。 また、消耗性疾患としての様相もおびている蛋白不足型となり、アルブミン分画、β分画は減少する。
(4)慢性肝障害型
高度の肝障害により、肝臓で生成させる蛋白が著しく低下し、免疫グロブリンは多クローン性に増加する。 蛋白分画ではγ分画の幅広い増加、他の蛋白はすべて減少するため、β分画とγ分画の分離が不明瞭となる。 このような分画像をβ-γ bridging (β-γ linking)と呼ぶ。 このβ-γ bridging は慢性肝障害、とくにアルコール性肝硬変で多く観察される。
(5)M蛋白血症型
単クローン性免疫グロブリン血症(monoclonal immunoglobulinemia)ともよばれ、M蛋白は、電気泳動上幅狭い蛋白帯を形成し、 しかも免疫学的に単一な種類のH鎖および(あるいは)L鎖から成る病的免疫グロブリンである。 M蛋白の一部は多発性骨髄腫、原発性マクログロブリン血症等の腫瘍性疾患と関係するため、その検出は診断的価値が大きい。 M蛋白が検出された場合、そのM蛋白が腫瘍性増殖による悪性M蛋白なのか、 反応性増殖で出現する良性M蛋白といわれるMGUS(Monoclonal Gammopathy of Undetermined Significance) かを鑑別しなければならない。 MGUSはM蛋白血症の約3/4を占める。しかし、両者を明確に鑑別できる手段は現時点では見つかっていない。 一般に検査上悪性と診断できる基準としては、 (1)M蛋白の著増、(2)M蛋白以外の他の免疫グロブリン量の著減、(3)Bence jones 蛋白(BJP)の存在、(4)比較的短期間のM蛋白の急激な増加などがあげられている。 しかし(1)から(4)までの所見がまったくないような微量M蛋白血症でも悪性の可能性が否定できない。