距離空間論 演習問題 第11回

  1. 問題 1.

    次の Euclid 空間の部分集合それぞれのについて、有界か、閉集合か、そして compact かどうかを考えよ。
    1. (a) {(x1,x2) ∈ ℝ2 | x21 + x22 = 1}
    2. (b) {(x1,x2) ∈ ℝ2 | x21 - x22 = 1}
    3. (c)  2{(x1,x2) ∈ ℝ | |x1|+|x2| = 1}
    4. (d) ℝ の部分集合として {1n | n = 1,2,⋅⋅⋅}∪ {0}
    5. (e) {(x1,x2,x3) ∈ ℝ3 | x1 + x2 +x3 = 1,x1 ≥ 0,x2 ≥ 0,x3 ≥ 0}
    6. (f)  3{(x1,x2,x3) ∈ ℝ | x1 + x2 +x3 = 1,x1 ≥ 0,x2 ≥ 0}
    7. (g)  2 2 2{(x1,x2,x3) ∈ ℝ3 | x14 + x29 + x136 = 1}
    8. (h) {(x1,x2,⋅⋅⋅ ,xn) ∈ ℝn | x1,⋅⋅⋅ ,xn ∈ ℤ, x21 + ⋅⋅⋅+x2n < 100}

    解説:

    式で定義されている集合では、閉集合かどうかは = ≤ で定義されているかどうかをみるとよい。 正確には、次のことを用いる:
    (X,dX ) (Y,dY) が距離空間で
    f : X -→ Y
    が連続写像のとき、 A Y の閉集合ならば f-1(A) X の閉集合である。
    今、連続写像
     nf : ℝ -→ ℝ
    に対し A = {0} ℝ の閉集合だから
    f-1({0}) = {x ∈ ℝn | f (x ) = 0}
    は閉集合となる。同様に [0,∞ ) ℝ の閉集合だから
    f-1([0,∞ )) = {x ∈ ℝn | f (x ) ≥ 0}
    も閉集合になる。
    また考えている集合 K が有界であることを示すには
    K ⊂ U (0;ε)
    となる ε を見付ければよい。逆に、有界ではないことを示すには、任意の ε > 0 に対し
    d(x, 0) > ε
    となる x ∈ K を見つければよい。または
    ln→im∞ d(xn,0) = ∞
    となる K の中の点列 {x }∞ n n=1 を見つければよい。

    解答:

    1. (a) 有界かつ閉集合、よって Heine-Borel の定理よりコンパクトである。
      (∵ ) 有界であることは、例えば
      {(x1,x2) ∈ ℝ2 | x2+ x2 = 1} ⊂ {(x1,x2) ∈ ℝ2 | x2 + x2< 2} = U(0;√2) 1 2 1 2
      であることから分かる。閉集合であることは、連続関数
      f(x ,x ) = x2+ x2 - 1 1 2 1 2
      を「解説」のように用いれば分かる。
    2. (b) 閉集合であるが有界でない。よって Heine-Borel の定理よりコンパクトではない。
      (∵ ) 点列
       ∘ ----2-xn = ( 1+ n ,n)
       2 2 2{(x1,x2) ∈ ℝ | x1 - x2 = 1} の中の点列であるが
       ∘ -------d(xn,0 ) = 2n2 + 1 → ∞ (n → ∞ )
      である。よって有界ではない。
      閉集合であることは、連続関数
      f(x1,x2) = x21 - x22 - 1
      を「解説」のように用いれば分かる。
    3. (c) 有界かつ閉集合、よって Heine-Borel の定理よりコンパクトである。
      (∵ ) 有界であることは
       -{(x1,x2) ∈ ℝ2 | |x1|+ |x2| = 1} ⊂ {(x1,x2) ∈ ℝ2 | x21 + x22 < 2} = U(0;√2)
      であることから分かる。
      閉集合であることは、連続写像
      f(x1,x2) = |x1|+ |x2|- 1
      を「解説」のように用いれば分かる。
    4. (d) 有界かつ閉集合、よって Heine-Borel の定理よりコンパクトである。
      (∵ ) 有界であることは
       1{n | n = 1,2,⋅⋅⋅} ∪ {0} ⊂ (- 2,2) = U (0;2)
      であることから分かる。
      閉集合であることは、中間試験の問題だったから全員知っているはず。
    5. (e) 有界かつ閉集合、よって Heine-Borel の定理よりコンパクトである。
      (∵ ) 有界であることは
       {(x1,x2,x3) ∈ ℝ3 | x1 + x2 + x3 = 1,x1 ≥ 0,x2 Ȧ 0,x3 ≥ 0} 3 2 2 2⊂ {x ∈ ℝ | x1 + x2 +x 3 ≤ 1}⊂ U(0;2)
      であることから分かる。
      閉集合であることは次のように考えるとよい: 連続関数
      f1(x1,x2,x3) = x1f (x ,x ,x ) = x 2 1 2 3 2f3(x1,x2,x3) = x3 g(x ,x ,x ) = x + x + x - 1 1 2 3 1 2 3
      を用いて
       3A1 = {x ∈ ℝ | f1(x) ≥ 0}A2 = {x ∈ ℝ3 | f2(x) ≥ 0} 3A3 = {x ∈ ℝ | f3(x) ≥ 0} B = {x ∈ ℝ3 | g(x) = 0}
      と定義すると、「解説」に書いたことからこれらは全て閉集合である。ま た
       3{(x1,x2,x3) ∈ ℝ | x1 + x2 + x3 = 1,x1 ≥ 0,x2 ≥ 0,x3 ≥ 0} = A1 ∩ A2 ∩A3 ∩ B
      となり、閉集合の共通部分として閉集合であることが分かる。
    6. (f) 閉集合であるが有界でない。よって Heine-Borel の定理よりコンパクトではない。
      (∵ ) 点列
      xn = (n,1,- n)
      はこの集合の元であるが
       ∘ -------d(xn,0 ) = 2n2 + 1 → ∞ (n → ∞ )
      である。よって有界ではない。
      閉集合であることは、前問と同様にして示される。
    7. (g) 有界かつ閉集合、よって Heine-Borel の定理よりコンパクトである。
      (∵ ) 有界であることは
       {(x1,x2,x3) ∈ ℝ3 | x21+ x22+ x23-= 1} 3 42 92 162⊂ {(x1,x2,x3) ∈ ℝ | x1 + x2 + x3 = 16}⊂ U (0;5)
      であることから分かる。
      閉集合であることは、連続関数
       x2 x2 x2f (x1,x2,x3) =-14 + 92+ 136 - 1
      を「解説」のように用いれば分かる。
    8. (h) コンパクトである。よって Heine-Borel の定理より有界かつ閉集合である。
      (∵ ) 原点からの距離が 10 未満で全ての座標が整数の点は有限個しかない。 7/5 の演習問題 8 より、これはコンパクトである。
      よって Heine-Borel の定理より有界閉集合となる。
  2. 問題 2.

    A B が距離空間 X の部分集合で共に compact のとき A ∪ B も compact になることを示せ。

    解答:

    A ∪ B の開被覆
    ⋃ Uλ ⊃ A ∪Bλ∈Λ
    をとる。
    A∪ B ⊃ A,B
    より、これは A の開被覆でもあり、 B の開被覆でもある。 A B も compact だから
    ⋃m Uλi ⊃ Ai=1⋃n Uμj ⊃ Bj=1
    となる
    λ1,⋅⋅⋅ ,λm,μ1,⋅⋅⋅ ,μn ∈ Λ
    が取れる。このとき
    m⋃ n⋃ U λi ∪ U μj ⊃ A ∪Bi=1 j=1
    だから、元の開被覆から A ∪ B の有限開被覆が選べた。よって A∪ B は compact である。
  3. 問題 3.

    A B が距離空間 X の部分集合で共に compact のとき A ∩ B も compact になることを示せ。

    解答:

    A B が compact だから閉集合になる。閉集合の共通部分は閉集合だから A ∩ B も閉集合である。
    ここで、 A が compact で A ∩B がその閉部分集合だから、 A ∩ B も compact である。
  4. 問題 4.

    距離空間 X の部分集合の列 A1,A2,⋅⋅⋅ で各 An が compact であるが
     ∞⋃A = An n=1
    が compact でない例を挙げよ。

    解答:

    X = ℝ とし、通常の距離で距離空間と考える。各 n ∈ ℕ に対し
    An = {n}
    とする。このとき An は有限集合だから compact である。しかし
     n⋃A = An = ℕ n=1
    は有界ではないので Heine-Borel の定理より compact ではない。
  5. 問題 5.

    {x }∞ n n=1 を距離空間 X の収束する点列とし、その極限を x 0 とする。このとき
    K = {x1,x2,⋅⋅⋅} ∪ {x0}
    は compact になることを示せ。

    解答:

    開被覆
     ⋃ Uλ ⊃ Kλ∈Λ
    をとる。各 n = 0,1,2,⋅⋅⋅ に対し
    xn ∈ Uλ n
    となる λn が存在する。特に U λ0
    x0 ∈ Uλ0
    となる X の開集合である。 x0 が内点であることから
    U (x0;ε) ⊂ U λ0
    となる ε > 0 が存在するが
    lim x = xn→∞ n 0
    より、この ε に対し、
    n > N =⇒ xn ∈ U(x0;ε)
    となる N が存在する。つまり
    {xN+1, xN+2,⋅⋅⋅} ⊂ U(x0;ε) ⊂ Uλ0
    である。よって
    K = {x1} ∪{x2} ∪⋅⋅⋅∪ {xN} ∪{xN+1, xN+2,⋅⋅⋅} ⊂ Uλ1 ∪ Uλ2 ∪⋅⋅⋅∪ UλN ∪U λ0
    となり、元の開被覆から有限個を選んで K を覆うことができた。よって K は compact である。
  6. 問題 6.

    離散距離空間 (X,dδ) の部分集合 A が compact ならば A は有限集合であることを示せ。

    解答:

    A が compact であると仮定する。 離散距離空間では任意の部分集合が開集合であることから、一点から成る集合も開集合である。よって
     ⋃ {a} = Aa∈A
    A の開被覆である。 A が compact ならば、この中から有限個を選んで A を覆えるはずであるが、各 {a} は異なる A の点であるから、一つでも欠けると A を覆うことはできない。つまり、もともと A が有限集合でなければならない。