距離空間論 演習問題 第10回
問題 1.
を
で距離空間と考える。このとき次の集合
は compact ではないことを示せ:
解答:
各
に対し
とおくと
であり、
は
の (無限) 開被覆である。ところが
より
が一つでも欠けると
を覆うことができない。よって compact ではない。
問題 2.
を
で距離空間と考える。開区間
の場合を真似て
が compact ではないことを示せ。
解答:
授業の
の例で用いた開被覆は
を覆うものだった。
のところで折り返し
と
を入れ替えれば compact の条件をみたさない被覆を得る。
のところで折り返す写像は
だから、
と定義すると
となり、
の開被覆を得る。しかし
が欠けると
が覆えなくなるので、この中から有限個の開集合を選んで
を覆うことはできない。よって
は compact ではない。
問題 3.
を
で距離空間と考える。このとき
は compact ではないこと示せ。
解答:
これも compact の条件をみたさない開被覆を見付ければよい。例えば
とおけば
が求める開被覆になる。
問題 4.
を
で距離空間と考える。このとき
は点列 compact ではないことを示せ。
解答:
収束しない部分列を含むような点列を一つ見付ければよい。 例えば
とおくと
は収束しないし、そのどんな部分列も収束しない。
問題 5.
を離散距離空間と考える。このとき閉区間
は compact ではないこ とを示せ。
解答:
各点
に対し
とおく。このとき
は
の開被覆であるが
であるから、
が一つでも欠けると
を覆うことができない。
は無限集合だから、これは
の中から有限個を選んで
を覆うことができないことを示している。よって
は compact ではない。
問題 6.
を
で距離空間と考える。このとき
は compact か?
解答:
は閉集合ではないので compact ではない。
問題 7.
を通常の距離で距離空間と考える。このとき、次の集合は compact では ないことを示せ:
解答:
Heine-Borel の定理を使えば簡単であるが、ここでは定義を用いて直接証明する。各
に対し
と定義する。これは
の開集合である。
より、これは
の開被覆である。
に対し
であるが、もしこの開被覆から
を除くと
となり
が含まれなくなり、
の開被覆でなくなってしまう。 このように、一つでも欠けると
を覆えなくなる無限開被覆が存在するので
は compact ではない。
問題 8.
距離空間の有限個の点から成る部分集合は compact であることを示せ。
解答:
を距離空間とし
をその有限部分集合とする。
の元の個数(濃度)が
として
とかく。
の任意の開被覆
について、この中から有限個の開集合を選んで
が覆えることを示せばよい。各
について、
を含む
を一つづつ選んでくると
となり
の有限開被覆となる。よって
は compact である。
問題 9.
距離空間
において、収束する点列
の任意の部分列も収束することを示せ。
解答:
を部分列とする。このとき
であることに注意する。
の収束先を
とすると、任意の
に対し、自然数
が存在し
となる。このとき
だから、
についても同じ
で
が成り立つ。これは
も
に収束することを示している。
問題 10.
距離空間
において、 Cauchy 列
の任意の部分列は Cauchy 列であることを示せ。
解答:
上の問題と同様なので省略。