距離空間論 演習問題 第10回

  1. 問題 1.

    ℝ d(x,y) = |x - y| で距離空間と考える。このとき次の集合 M は compact ではないことを示せ:
    { | } -1|| n |n = 1,2,⋅⋅⋅

    解答:

    n に対し
    δn = 1-- --1--= ---1---- n n + 1 n(n+ 1)
    とおくと
     ∞⋃ U (n;δ ) ⊃ Mn=1 n
    であり、 {U (n;δn) | n = 1,2,⋅⋅⋅} M の (無限) 開被覆である。ところが
     { } -1U (n;δn) ∩M = n
    より U (n;δn) が一つでも欠けると M を覆うことができない。よって compact ではない。
  2. 問題 2.

    ℝ d(x,y) = |x - y| で距離空間と考える。開区間 (0,1) の場合を真似て [0,1) が compact ではないことを示せ。

    解答:

    授業の (0,1) の例で用いた開被覆は (0,1] を覆うものだった。 12 のところで折り返し 0 1 を入れ替えれば compact の条件をみたさない被覆を得る。 12 のところで折り返す写像は
    x ↦-→ 1- x
    だから、
     ( 3 1 )Un = 1- 2n,1- 2n
    と定義すると
     ∞⋃ ( 1 ) Un = - -,1n=1 2
    となり、 [0,1) の開被覆を得る。しかし Un が欠けると 1- 2n1-1 が覆えなくなるので、この中から有限個の開集合を選んで [0,1) を覆うことはできない。よって [0,1) は compact ではない。
  3. 問題 3.

    ℝ d(x,y) = |x - y| で距離空間と考える。このとき [0,∞ ) は compact ではないこと示せ。

    解答:

    これも compact の条件をみたさない開被覆を見付ければよい。例えば
    Un = (n- 1,n + 1)
    とおけば {Un | n = 0,1,2,⋅⋅⋅} が求める開被覆になる。
  4. 問題 4.

    ℝ d(x,y) = |x - y| で距離空間と考える。このとき ℝ は点列 compact ではないことを示せ。

    解答:

    収束しない部分列を含むような点列を一つ見付ければよい。 例えば an = n とおくと {an} は収束しないし、そのどんな部分列も収束しない。
  5. 問題 5.

    ℝ を離散距離空間と考える。このとき閉区間 [0,1] は compact ではないこ とを示せ。

    解答:

    各点 x ∈ [0,1] に対し
    U = U(x;1) x
    とおく。このとき {Ux | x ∈ [0,1]} [0,1] の開被覆であるが
    U = {x} x
    であるから、 Ux が一つでも欠けると [0,1] を覆うことができない。 [0,1] は無限集合だから、これは {Ux | x ∈ [0,1]} の中から有限個を選んで [0,1] を覆うことができないことを示している。よって [0,1] は compact ではない。
  6. 問題 6.

    ℝ d(x,y) = |x - y| で距離空間と考える。このとき ℚ は compact か?

    解答:

    ℚ は閉集合ではないので compact ではない。
  7. 問題 7.

     2ℝ を通常の距離で距離空間と考える。このとき、次の集合は compact では ないことを示せ:
    K = {(x,y) ∈ ℝ2 | y = x2}

    解答:

    Heine-Borel の定理を使えば簡単であるが、ここでは定義を用いて直接証明する。各 n ∈ ℤ に対し
    U = {(x,y) ∈ ℝ2 | n- 1 < x < n + 1} = (n - 1,n + 1)× ℝ n
    と定義する。これは ℝ2 の開集合である。
    ⋃ Un = ℝ2 ⊃ Kn∈ℤ
    より、これは K の開被覆である。 m ∈ ℤ に対し (m, m2) ∈ K であるが、もしこの開被覆から Um を除くと
     ⋃ Un = (- ∞, m) × ℝ∪ (m,∞ )× ℝn∈ℤ,n⁄=m
    となり (m, m2) ∈ K が含まれなくなり、 K の開被覆でなくなってしまう。 このように、一つでも欠けると K を覆えなくなる無限開被覆が存在するので K は compact ではない。
  8. 問題 8.

    距離空間の有限個の点から成る部分集合は compact であることを示せ。

    解答:

    (X,d) を距離空間とし A をその有限部分集合とする。 A の元の個数(濃度)が n として
    A = {a ,⋅⋅⋅ ,a } 1 n
    とかく。
    A の任意の開被覆
     ⋃ Uλ ⊃ Aλ∈Λ
    について、この中から有限個の開集合を選んで A が覆えることを示せばよい。各 i について、 ai を含む Uλi を一つづつ選んでくると
    ⋃n Uλi ⊃ {a1,⋅⋅⋅ ,an} = Ai=1
    となり A の有限開被覆となる。よって A は compact である。
  9. 問題 9.

    距離空間 (X, d) において、収束する点列  ∞{xn}n=1 の任意の部分列も収束することを示せ。

    解答:

     ∞{xnk}k=1 を部分列とする。このとき nk ≥ k であることに注意する。 {xn} の収束先を a とすると、任意の ε > 0 に対し、自然数 N が存在し
    k > N = ⇒ d(xk,a) < ε
    となる。このとき n ≥ k k だから、 {x } nk についても同じ N
    k > N =⇒ nk > N =⇒ d(xnk,a) < ε
    が成り立つ。これは {xnk} a に収束することを示している。
  10. 問題 10.

    距離空間 (X, d) において、 Cauchy 列 {xn}∞n=1 の任意の部分列は Cauchy 列であることを示せ。

    解答:

    上の問題と同様なので省略。