距離空間論 演習問題 第9回

  1. 問題 1.

    距離空間 (ℝ2,d(2)) 1 で考える。この距離空間において
    A = {(x,y) ∈ ℝ2 | x = y}
    の内部  ∘A と閉包 --A を求めよ。

    解答:

    授業のときの例の真似をする。答えは
    A∘ = ∅ -- A = A
    である。まず A ∘ = ∅ を示そう。もし元 a = (x,y) ∈ A∘ が存在したとすると、内部 の定義より
    U (a;δ) ⊂ A
    となる δ > 0 が存在する。ここで a ∈ A より x = y であり a = (x,x ) と書ける。 このとき  δb = (x,x+ 2) とおくと
     (2) δ δd1 (b,a) = |x- x|+ |x+ 2 - x| = 2 < δ
    より b ∈ U (a,δ) ⊂ A となるが、 b x 座標と y 座標は異なるので b A の元ではない。これは矛盾であり A ∘ = ∅ となる。
    次に閉包を考える。 --A ⊂ A を示せばよいが、そのためには  e 2A ⊃ ℝ - A を示せば よい。 a = (a1,a2) ∈ ℝ2 - A をとると、 a1 ⁄= a2 である。そこで δ = |a1 - a2| とおくと δ > 0 である。このとき
    U (a;δ) ⊂ ℝ2 - A
    を示そう。実際 x = (x ,x ) ∈ U(a;δ) 1 2 に対し d(2)(a, x) < δ 1 だから
    |a1 - x1|+ |a2 - x2| < δ = |a1 - a2|
    である。ここで絶対値の三角不等式より
    |a1 - a2| ≤ |a1 - x1|+|x1 - x2|+ |x2 - a2|
    だから
    |a - x |+ |a - x | < |a - x |+ |x - x |+ |x - a | 1 1 2 2 1 1 1 2 2 2
    となる。よって |x1 - x2| > 0 であり  2x ∈ ℝ - A であることが示された。
  2. 問題 2.

    距離空間  2 (2)(ℝ ,d2 ) で考える。この距離空間において
     2B = {(x,y) ∈ ℝ | 0 < y < 1}
    の内部 B∘ と閉包 --B を求めよ。

    解答:

    答えは
    B ∘ = B -- 2 B = {(x,y) ∈ ℝ | 0 ≤ y ≤ 1}
    である。
    内部については、 B の任意の点が B の内点であることを示せばよいが、実際 b = (b1,b2) ∈ B に対し 0 < b2 < 1 より
    δ = min{b2,1 - b2}
    とおくと δ > 0 であり
    U (b;δ) ⊂ B
    であることが分かる。よって b B の内点である。
    次に閉包を考えるために外部について
    Be = ℝ2 - {(x,y) ∈ ℝ2 | 0 ≤ y ≤ 1} = {(x,y) ∈ ℝ2 | y < 0} ∪ {(x,y) ∈ ℝ2 | y > 1}
    を示す。  eb = (b1,b2) ∈ B に対し
     2U (b;δ) ⊂ ℝ - B
    となる δ > 0 が存在する。このとき b2 ≤ 0 b2 ≥ 1 のどちらかであるが、 b2 ≤ 0 のとき b′ = (b1,b2 + δ) 2 とおくと b′ ∈ U(b;δ) でありよって  ′ 2b ∈ ℝ - B 、つまり
     δb2 + 2 ≤ 0
    となる。よって
    b ≤ - δ < 0 2 2
    となる。 b2 ≥ 1 の場合、同様に b2 > 1 が示される。よって
    b ∈ {(x,y) ∈ ℝ2 | y < 0}∪ {(x,y) ∈ ℝ2 | y > 1}
    が示され
    Be ⊂ {(x,y) ∈ ℝ2 | y < 0}∪ {(x,y) ∈ ℝ2 | y > 1}
    が分かった。
    逆の包含関係を示すために b = (b1,b2) ∈ {(x,y) | y < 0} をとると、 b2 < 0 だから δ = |b2| とおくと δ > 0 となり
    U(b;δ) ⊂ {(x,y) | y ≤ 0} ⊂ ℝ2 - B
    となる。よって  eb ∈ B である。 b2 > 1 の場合も同様であり
     2 2 e{(x,y) ∈ ℝ | y < 0}∪ {(x,y) ∈ ℝ | y > 1} ⊂ B
    が示される。
  3. 問題 3.

    距離空間 (ℝ2,d(2)) 2 で考える。この距離空間において
    C = {(x,0) ∈ ℝ2 | 0 < x < 1}
    の内部  ∘C と閉包 --C を求めよ。

    解答:

    答えは
     ∘C = ∅ C- = {(x,0) ∈ ℝ2 | 0 ≤ x ≤ 1}
    である。
    C ∘ = ∅ は問題 1 と同様に背理法で示される。閉包については、やはり補集合をとり
    Ce = {(x,y) ∈ ℝ2 | x < 0}∪{(x,y) ∈ ℝ2 | x > 1}∪{(x,y) ∈ ℝ2 | y < 0}∪{(x,y) ∈ ℝ2 | y > 0}
    を示す。これは問題 2 と同様である。詳細は省略。
  4. 問題 4.

    離散距離空間 (X,dδ) において次を示せ:
    -------------------{x ∈ X | dδ(x,a) < 1} = {a}{x ∈ X | dδ(x,a) ≤ 1} = X

    解答:

    まず離散距離空間の定義から、任意の x ∈ X に対し dδ(x,a) ≤ 1 であ り
    {x ∈ X | d(x,a) ≤ 1} = X δ
    であることが分かる。また
    {x ∈ X | dδ(x,a) < 1} = {x ∈ X | dδ(x,a) = 0} = {a}
    であるから
    ------------------- ---{x ∈ X | dδ(x,a) < 1} = {a}
    である。よって {a} = {a} を示せばよい。一般に {a} ⊂ {a} だから逆の包含関係を 示せばよい。  ---x ∈ {a} をとると、触点の定義より、任意の δ > 0 に対 し
    U (x;δ)∩ {a} ⁄= ∅
    であるが、特に δ ≤ 1 ととると U(x;δ) = {x} であり、 x = a となる。よって x ∈ {a} であり
    ---{a} = {a}
    が示された。
  5. 問題 5.

    離散距離空間 (X,dδ) においては, 全ての部分集合が開集合であることを示せ。

    解答:

    A X の部分集合とする。任意の a ∈ A A の内点であることを示せば よいが、これは
    U(a;1) = {a} ⊂ A
    であることから分かる。
  6. 問題 6.

    p > 1 , 1 1p + q = 1 に対し, 関数
     1 p 1f(x) = p x - x+ q
    の増減を調べることにより, a,b ≥ 0 , p > 1 , 1+ 1= 1p q のとき次が成り立 つことを示せ:
     ap bqab ≤-p + q-

    解答:

    まず 1 + 1= 1p q より
     1 p - 1 q = --p-- p q = p---1(p - 1)(q- 1) = 1
    などの関係があることに注意する。 b = 0 のときは、証明すべき不等式は自明だから b > 0 とする。証明すべき不等式の両辺を bq で割ると
     p--a- ≤ 1a- + 1bq-1 p bq q
    となる。ここで
     p ( )p ( )paq = -aq- = -aq--1b bp b
    だから、結局 a ≥ 0 b > 0 に対し
     ( a )f bq-1 ≥ 0
    を示せばよい。 f (x) x に関し微分可能だから微分すると
     ′ p-1f (x) = x - 1
    となる。 p > 1 より、 x ≥ 0 の範囲では f(x ) x = 1 で極小値を持つのみ。と ころが
     1 1f(1) = p + q - 1 = 0
    である。よって任意の x ≥ 0 に対し
    f(x) ≥ 0
    が示された。
  7. 問題 7.

    p > 1 , 1p + 1q = 1 とする。 ai,bi ≥ 0 に対し
    x = ----ai---- i (∑n ap)p1 i=1b iyi = -∑n--iq-1- ( i=1 bi)q
    とおき, xi yi に対し上の問題の不等式を用いることにより
    ∑n ( ∑n ) 1p (∑n ) 1q aibi ≤ api bqii=1 i=1 i=1
    が成り立つことを示せ。

    解答:

    これは問題の指示通りに計算するだけなので省略。
  8. 問題 8.

    p > 1 とする。 a ,b ≥ 0 i i に対し
    ∑n p ∑n p-1 ∑n p-1 (ai + bi) = ai(ai + bi) + bi(ai + bi)i=1 i=1 i=1
    と変形し, 上の問題の不等式を用いることにより
    ( ) 1 ( ) 1 ( ) 1 ∑n p p ∑n p p ∑n p p (ai + bi) ≤ ai + bi i=1 i=1 i=1
    が成り立つことを示せ。

    解答:

    これも問題の指示通りに計算するだけなので省略。
  9. 問題 9.

    p > 1 とする。上の問題を用いて ℝn 上で
     ( ) 1 (n) n∑ p pdp (x, y) = |xi - yi| i=1
    が距離関数になることを確かめよ。

    解答:

    三角不等式以外は簡単なので省略。三角不等式については、まず絶対値の三角不等式より
    |xi - zi| ≤ |xi - yi|+ |yi - zi|
    が成り立つ。よって、まず
     ( ) 1 ( ) 1 ∑n p ∑n pd(np)(x,z) = |xi - zi|p ≤ (|xi - yi|+ |yi - zi|)p i=1 i=1
    が分かる。ここで
    ai = |xi - yi| bi = |yi - zi|
    とおき、問題 8 の不等式を用いると
     ( ) 1 ( ) 1 (n) n∑ p p ∑n p p (n) (n)dp (x, z) ≤ (|xi - yi|) + (|yi - zi|) = dp (x,y)+ dp (y,z) i=1 i=1
    となり、三角不等式が示される。