距離空間論 演習問題 第8回

  1. 問題 1.

    写像 x = (x1,⋅⋅⋅ ,xn),y = (y1,⋅⋅⋅ ,yn ) ∈ ℝn に対し
     nd(n)(x,y) = ∑ |xi - yi| 1 i=1
    で定義するとき、これは metric になることを示せ。

    解答:

    条件を順番に確かめるだけである:
    1. (a) |xi - yi| ≥ 0 より
       ∑nd(1n)(x,y) = |xi - yi| ≥ 0 i=1
      である。
    2. (b) |xi - yi| ≥ 0 より
       (n)d1 (x,y) = 0 =⇒ |xi - yi| = 0 for all i =⇒ xi = yi for all i =⇒ x = y
    3. (c) |xi - yi| = |yi - xi| より
       (n) n∑d1 (x,y ) = |xi - yi| i=1 n∑ = |yi - xi| i=1(n) = d1 (y,x)
    4. (d) 各 i について絶対値の三角不等式より
      |xi - zi| ≤ |xi - yi|+ |yi - zi|
      よって
       ∑nd(1n)(x,z ) = |xi - zi| i ∑n ≤ (|xi - yi|+ |yi - zi|) i ∑n ∑n = |xi - yi|+ |yi - zi| i(n) (n)i = d1 (x,y)+ d1 (y,z)
      となり、三角不等式が証明できた。
  2. 問題 2.

    x = (x1,⋅⋅⋅ ,xn) ,  ny = (y1,⋅⋅⋅ ,yn) ∈ ℝ に対し
    d(∞n)(x,y) = max{|xi - yi| | i = 1,⋅⋅⋅ ,n}
    で定義するとき、これは metric になることを示せ。
    解答: これも順番に確かめるだけ:
    1. (a)  (n)d∞ (x,y) ≥ 0 |xi - yi| ≥ 0 からすぐ分かる。
    2. (b) |x - y | ≥ 0 i i なので d(n)(x,y) = 0 ∞ ならば全ての i に つ い て |xi - yi| = 0 でなればならない。よって x = y である。
    3. (c) これも |xi - yi| = |yi - xi| からすぐ分かる。
    4. (d) 三角不等式はちょっと面倒である。まず絶対値の三角不等式より
      |xi - zi| ≤ |xi - yi|+ |yi - zi|
      が全ての i について成り立つ。よって
      max{|xi - zi| | i = 1,⋅⋅⋅ ,n} ≤ max{|xi - yi|+ |yi - zi| | i = 1,⋅⋅⋅ ,n}
      である。ここで
      max {|xi- yi|+|yi- zi| | i = 1,⋅⋅⋅ ,n} ≤ max{|xi- yi| | i = 1,⋅⋅⋅ ,n}+max {|yi- zi| | i = 1,⋅⋅⋅ ,n}
      だから
      d(∞n)(x, z) ≤ d(∞n)(x,y)+ d(∞n)(y,z)
      となる。
  3. 問題 3.

     2 (2)(ℝ ,d1 ) での原点を中心とした半径 ε の open ball を図示せよ。

    解答:

    定義より
     2U (0;ε) = {(x1,x2) ∈ ℝ | |x1|+ |x2| < ε}
    である。ここで絶対値が場合分けで定義されていた
     ({|a| = a, a ≥ 0 ( - a, a ≤ 0
    ことを思い出すと
     2U (0;ε) = {(x1,x2) ∈ ℝ | |x1|+ |x2| < ε} = {(x1,x2) ∈ ℝ2 | x1 ≥ 0,x2 ≥ 0,x1 + x2 < ε} 2 ∪{(x1,x2) ∈ ℝ | x1 ≥ 0,x2 ≤ 0,x1 - x2 < ε} ∪{(x1,x2) ∈ ℝ2 | x1 ≤ 0,x2 ≥ 0,- x1 + x2 < ε} 2 ∪{(x1,x2) ∈ ℝ | x1 ≤ 0,x2 ≤ 0,- x1 - x2 < ε}
    となる。これは直角二等辺三角形を 4 つ合わせた形であり図示すると次のようにな る。
    PICT
    ただし境界は含まず内部のみ。
  4. 問題 4.

    離散距離空間での open ball は何か?
    解答: 半径の値によって二種類ある。 (X, d) δ を離散距離空間とすると、 x ∈ X に対し
     ({U (x;ε) = {x}, ε ≤ 1 (X, ε > 1
    となる。
  5. 問題 5.

    d が集合 X 上の metric であるとき
     ′ d(x,y)d (x,y) = 1-+d(x,y)
    X 上の metric になることを示せ。

    解答:

    f(t) =-t-= 1 - -1- 1+t 1+t とおき、まずこの関数の性質を調べるとよい。
    1. (a) ddft(t) = (11+t)2-≥ 0 だから f(t) は単調増加である
    2. (b) t = 0 のとき f (0) = 0 であり f(t) は単調増加だから t ≥ 0 のとき f(t) ≥ 0 となる
    3. (c) f(t) = 0 であるのは t = 0 の場合に限る
    以上のことと d(x,y) が metric であることから次のことが分かる:
    1. (a) d′(x,y) ≥ 0
    2. (c) d′(x,y) = 0 ⇐⇒ x = y
    3. (d) d′(x,y) = d′(y,x)
    やはり三角不等式は面倒である。しかし、それについても関数 f (t) の性質を調べることによる分かる。まず d(x,y) がmetricであることより
    d(x,z) ≤ d(x,y) +d(y,z)
    が成り立つ。ここで f(t) は単調増加だから
    d′(x,z) = f (d(x,z)) ≤ f(d(x,y) + d(y,z))
    である。よって a = d(x,y) b = d(y,z) とおくとき
    f(a+ b) ≤ f(a)+ f(b)
    を示せばよい。これは以下のように証明できる:
    f(a+ b) = --a-+b-- 1 + a+ b = ----a--- + ---b---- 1 + a+ b 1+ a+ b ≤ --a--+ -b--- 1 + a 1+ b = f(a)+ f(b)
    これで d′(x,y) が metric であることが示された。
  6. 問題 6.

    次は ℝ 上の metric になるか?
     2 2d(x,y) = |x - y |

    解答:

    ならない。例えば
    d(1,- 1) = |1- 1| = 0
    であるが 1 ⁄= - 1 である。
  7. 問題 7.

    次は ℝ 上の metric になるか?
    d(x,y) = |x3 - y3|

    解答:

    なる。証明は簡単なので省略。
  8. 問題 8.

    次は  2ℝ 上の metric になるか?
    d(x,y ) = |x1 - y1|
    ただし x = (x1,x2) y = (y1,y2) である。

    解答:

    ならない。例えば x = (1,0) y = (1,1) とすると
    d(x, y) = |1- 1| = 0
    であるが x ⁄= y である。