距離空間論 演習問題 第4回

  1. 問題 1.

    B = [a,b] に対し次を示せ:
     B∘ = (a,b) e B = (- ∞, a)∪ (b,∞ )Bf = {a,b}

    解答:

    まず内部を考えよう。集合の等式を示すのだから
    B ∘ ⊂ (a,b) ∘B ⊃ (a,b)
    を示す。
     ∘x ∈ B なら
    ∃ε > 0 s.t. U (x;ε) ⊂ B
    である。 U (x;ε) = (x - ε,x + ε) より (x - ε,x + ε) ⊂ B = [a,b] となる。これは
    a ≤ x - εb ≥ x + ε
    ということ。よって
    a < a +ε ≤ x ≤ b- ε < b
    となり、 x ∈ (a,b) 、よって
    B∘ ⊂ (a,b)
    である。
    逆に x ∈ (a,b) とする、つまり
    a < x < b
    とする。 ε = min{x- a,b- x} とおくと
    ε ≤ x - aε ≤ b- x
    であり、 a+ ε ≤ x ≤ b- ε だから
    U (x,ε) = (x- ε,x+ ε) ⊂ [a,b] = B
    よって x ∈ B∘ となる。これで (a,b) ⊂ B∘ が示され、 (a,b) = B ∘ が証明された。
    外部は、内部とほとんど同じなので省略。
    内部と外部が分かれば、境界は分かる:
    Bf = ℝ - B∘ - Be = ℝ - (a,b)- (- ∞,a)∪ (b,∞) = {a,b}
  2. 問題 2:

    C = [a,b) について、その内部、外部、境界は何になるか?

    解答:

    問題 1のようにやってもよいが、以下のようにすると楽である。
    (a,b) ⊂ [a,b) ⊂ [a,b]
    より
     ∘ ∘ ∘(a,b) ⊂ [a,b) ⊂ [a,b]
    となる。ここで
    (a,b)∘ = (a,b) ∘[a,b] = (a,b)
    だから  ∘[a,b) = (a,b) となる。
    同様に [a,b)e = (a,b)e = [a,b]e = (- ∞, a)∪ (b,∞ ) が示せる。
    よって
     f[a,b) = ℝ - (a,b) - (- ∞,a) ∪(b,∞ ) = {a,b}
    である。
  3. 問題 3.

     nA,B ⊂ ℝ に対し次を示せ:
    A∘ ∪B ∘ ⊂ (A ∪ B)∘
    また A∘ ∪ B ∘ ⁄= (A ∪B )∘ である例を挙げよ。

    解答:

    まず
    A ⊂ A ∪ BB ⊂ A ∪ B
    より
     ∘ ∘A ⊂ (A ∪ B)B∘ ⊂ (A ∪ B)∘
    となる。よって
     ∘ ∘ ∘A ∪B ⊂ (A ∪ B)
    である。
    例としては
    A = [- 1,0]B = [0,1]
    がある。
  4. 問題 4.

     na ∈ ℝ ε > 0 に対し M = U (a;ε) とする。このとき次を示せ:
     e nM = {x ∈ ℝ | ∥x - a∥ > ε}M f = {x ∈ ℝn | ∥x - a∥ = ε}

    解答:

    外部について考える。  ex ∈ M ならば
     c n∃δ > 0 s.t. U(x;δ) ⊂ M = ℝ - U (a;ε)
    すなわち
    y ∈ U (x;δ) = ⇒ y ∈ ℝn - U (a;ε)
    である。言い替えると
    ∥y - x∥ < δ =⇒ ∥y - a∥ ≥ ε
    となる。ここで
     ( δ ) δy = 1 - 2∥x--a∥- x + 2∥x--a∥a
    とおくと
     ---δ----x- y = 2∥x - a∥ (x - a)
    であり
     δ∥x---a∥ δ∥x - y∥ = 2∥x - a∥ = 2 < δ
    だから
    ∥y - a∥ ≥ ε
    が成り立つはずである。よって
     ( δ )y - a = 1- ∥x-- a∥ (x - a)
    より
    ( ) 1 - --δ---- ∥x- a∥ ≥ ε ∥x- a∥
    となり
    ∥x- a∥ ≥ ε+ δ > ε 2
    つまり x ∈ {x ∈ ℝn | ∥x - a∥ > ε} が示された。
    逆に x ∈ {x ∈ ℝn | ∥x- a∥ > ε} のとき
    δ = ∥x - a∥- ε
    とすると δ > 0 であり
     nU(x;δ) ⊂ ℝ - U(a;ε)
    となることが分かる。よって
    M e = {x ∈ ℝn | ∥x- a∥ > ε}
    が言えた。
    M ∘ = {x ∈ ℝn | ∥x- a∥ < ε}
    と合わせて
    M f = ℝn - M ∘ - M e = {x ∈ ℝn | ∥x- a∥ = ε}
    となる。
  5. 問題 5.

    M = {(x,y) ∈ ℝ2 | a1 < x < b1,a2 < y < b2} とする。このとき M の内部、外部、境界を求めよ。

    解答:

    答えは以下のようになる。「かつ」と「または」に注意すること:
    M ∘ = M e 2M = {(x,y) ∈ ℝ | x < a1 or x > b1 or y < a2 or y > b2}M f = {(x,y) ∈ ℝ2 | x = a1 and a2 ≤ y ≤ b2} 2 ∪{(x,y) ∈ ℝ | x = b1 and a2 ≤ y ≤ b2} ∪{(x,y) ∈ ℝ2 | a1 ≤ x ≤ b1 and y = a2} 2 ∪{(x,y) ∈ ℝ | a1 ≤ x ≤ b1 and y = b2}
    証明は省略。
  6. 問題 6.

     2H = {(x,y) ∈ ℝ | y > x} の内部、外部、境界は何か?

    解答:

    答えは以下のようになる:
     ∘H = HHe = {(x,y) ∈ ℝ2 | y < x} f 2H = {(x,y) ∈ ℝ | y = x}
    証明は以下の通り。 H ∘ ⊂ H であるから, 任意の (x,y) ∈ H が内点であることを示す。 y > x より δ = y-√-x 2 とおくと δ > 0 であり
    U((x,y);δ) ⊂ H
    となる。よって (x,y) H の内点である。同様に
     e 2H = {(x,y) ∈ ℝ | y < x}
    が示せる。よって
    Hf = ℝ2 - H∘ - He = {(x,y) ∈ ℝ2 | y = x}
    である。
  7. 問題 7:

     na ∈ ℝ に対し一点から成る集合 {a} の内部、外部、境界は何か?

    解答:

    答えは以下のようになる:
     ∘{a} = ∅{a}e = ℝn - {a} f{a} = {a}
    証明は以下の通り。まず ∀ε > 0 に対し
    {a} ⊊ U (a;ε)
    であるから {a} の内点は存在しない。よって
    {a}∘ = ∅
    である。また
     e c∘ n ∘{a} = ({a} ) = (ℝ - {a})
    であるが、任意の  nx ∈ ℝ - {a} に対し
     ∥x- a∥δ = ---2---
    とおくと
     nU (x;δ) ⊂ ℝ - {a}
    となる。よって
    (ℝn - {a})∘ = ℝn - {a}
    となり
    {a}e = ℝn - {a}
    である。以上のことより
     f n ∘ e n n{a} = ℝ - {a} - {a} = ℝ - (ℝ - {a}) = {a}
    となる。
  8. 問題 8:

    有理数の集合 ℚ ⊂ ℝ に対し次を確かめよ:
     ∘ℚ = ∅ℚe = ∅ fℚ = ℝ

    解答:

    任意の a ∈ ℚ ε > 0 に対し
    a < x < a+ ε
    となる x ∈ ℝ - ℚ が存在する。よって
    U (a;ε) ⊂ ℚ
    となる ε は存在しない。つまり ℚ の内点は存在しない。よって
     ∘ℚ = ∅
    である。同様の理由で
    ℚe = ∅
    となる。よって
    ℚf = ℝ - ℚ ∘ - ℚe = ℝ
    となる。
  9. 問題 9:

    空集合の内部、外部、境界は何か?

    解答:

    ℝn で考える。答えは以下のようになる:
     ∅∘ = ∅ e n ∅ = ℝ∅f = ∅
    証明は以下の通り。まず一般に  ∘A ⊂ A であるから,  ∘A = ∅ とすると
     ∘∅ ⊂ ∅
    である。これは ∅∘ = ∅ であることを意味する。次に
    ∅e = (∅c)∘ = (ℝn)∘
    であるが,  nℝ の点は全て内点であり  n ∘ n(ℝ ) = ℝ , よって
     e n∅ = ℝ
    である。よって
    ∅f = ℝn - ∅∘ - ∅e = ℝn - ℝn = ∅
    となる。