距離空間論 演習問題 第2回

  1. 問題 1.

    2つの写像
     f gX -→ Y -→ Z
    に対し次を示せ
    1. (a) g∘ f が全射 = ⇒ g が全射
    2. (b) g∘ f が単射 = ⇒ f が単射

    解答:

    1. (a) g∘ f が全射ならば (g∘f)(X ) = Z である。ここで
      f(X ) ⊂ Y
      より
      (g ∘f)(X) = g(f (X )) ⊂ g(Y)
      であり
      Z ⊂ g(Y)
      となる。ところが g(Y) ⊂ Z であるから
      Z = g(Y)
      となる。
    2. (b) f が単射であることを示すために
       ′f(x ) = f(x)
      と仮定する 。両辺を g で写して
       ′g(f(x)) = g(f(x ))
      となるが g∘ f が単射であることより
       ′x = x
      となる。これで f が単射であることが示された。
  2. 問題 2.

    写像 f : X -→ Y に対し次が成り立つことを確かめよ:
    1. (a) f(A1 ∪ A2) = f(A1 )∪ f(A2) 、より一般に
       ( ) ⋃ ⋃f A λ = f (A λ) λ∈Λ λ∈Λ
    2. (b) f-1(B1 ∪ B2) = f-1(B1)∪ f-1(B2) 、より一般に
       ( ) - 1 ⋃ ⋃ -1f ( B μ) = f (B μ) μ∈M μ∈M
    3. (c) f(A1 ∩ A2) ⊂ f(A1 )∩ f(A2) 、 より 一 般 に
       ( ) ⋂ ⋂f A λ ⊂ f (A λ) λ∈Λ λ∈Λ
    4. (d) f-1(B ∩ B ) = f-1(B )∩ f-1(B ) 1 2 1 2 、 より 一 般 に
       ( ) ⋂ ⋂f- 1( B μ) = f-1(B μ) μ∈M μ∈M
    5. (e)  -1A ⊂ f (f(A))

    解答:

    一般の場合を示す。
    1. (a)
       ( ) ⋃ ⋃y ∈ f Aλ ⇐⇒ ∃x ∈ Aλ s.t. y = f(x) λ∈Λ λ∈Λ ⇐⇒ ∃λ ∈ Λ s.t. ∃x ∈ Aλ s.t. y = f(x ) ⇐⇒ ∃λ ∈ Λ s.t. y ∈ f (A λ) ⋃ ⇐⇒ y ∈ f(Aλ) λ∈Λ
    2. (b)
       ( ) ⋃ ⋃x ∈ f-1( Bμ) ⇐⇒ f(x) ∈ B μ μ∈M μ∈M ⇐⇒ ∃μ ∈ M s.t. f(x) ∈ Bμ - 1 ⇐⇒ ∃μ ∈⋃M s.t. x ∈ f (B μ) ⇐⇒ x ∈ f -1(B μ) μ∈M
    3. (c)
       ( ) ⋂ ⋂y ∈ f Aλ ⇐⇒ ∃x ∈ Aλ s.t. y = f(x) λ∈Λ λ∈Λ ⇐⇒ ∃x s.t. ∀λ ∈ Λ,x ∈ A λ and y = f(x) =⇒ ∀λ ∈ Λ,∃xλ ∈ A λ s.t. y = f(xλ) ⇐⇒ ∀λ ∈⋂Λ,y ∈ f(Aλ) ⇐⇒ y ∈ f(Aλ) λ∈Λ
    4. (d)
       ( )x ∈ f-1( ⋂ B ) ⇐⇒ f(x) ∈ ⋂ B μ∈M μ μ∈M μ ⇐⇒ ∀μ ∈ M s.t. f(x) ∈ Bμ ⇐⇒ ∀μ ∈ M s.t. x ∈ f- 1(B μ) ⋂ -1 ⇐⇒ x ∈ f (Bμ)
    5. (e)
      x ∈ A =⇒ f(x) ∈ f(A) - 1 ⇐ ⇒ x ∈ f (f(A))
  3. 問題 3.

    f(A ∩A ) = f(A )∩ f(A ) 1 2 1 2 とならない写像 f の例を挙げよ。また f が単射ならば、常に f(A1 ∩ A2) = f (A1 )∩f (A2 ) であることを示せ。

    解答:

    基本的に A ∩ A = ∅ 1 2 であるが f(A ) ∩f(A ) ⁄= ∅ 1 2 である例を見つければよい。 ほとんどの人が例は有限集合で考えてくれていたが、高校のときによく使った 2 次関数を使うと以下のような例がある: 写像 f : ℝ → ℝ f (x) = x2 で定義する。
    A = [- 2,- 1] 1A2 = [1,2]
    に 対 し A1 ∩A2 = ∅ だから
    f(A1 ∩ A2) = ∅
    であるが
    f(A1) ∩f(A2) = [1,4]∩ [1,4] = [1,4] ⁄= ∅
    である 。 f が単射であるときの証明は以下の通り: 問題 2(c)で
    f (A1 ∩ A2) ⊂ f(A1) ∩f(A2)
    が示されているので
    f (A1 )∩f (A2 ) ⊂ f(A1 ∩ A2)
    を示せばよい。
    y ∈ f (A1 )∩f (A2) ⇐⇒ y ∈ f (A1 ) and y ∈ f (A2) ⇐⇒ ∃x1 ∈ A1 s.t. y = f(x1) and ∃x2 ∈ A2 s.t. y = f(x2)
    このとき
    f (x1) = f(x2)
    であるから、 f が単射であることより
    x1 = x2
    となる。これを x とおくと 、 x ∈ A1 ∩ A2 となり
    ∃x ∈ A1 ∩ A2 s.t. y = f(x)
    となる。よって
    y ∈ f(A ∩ A ) 1 2
    である。
  4. 問題 4:

     -1A = f (f(A)) とならない写像 f の例を挙げよ。また f が単射ならば、常に A = f-1(f(A)) であることを示せ。

    解答 :

    これも 2 次関数の例を挙げる。問題 3と同じ関数 f に対し、 A = [0,1] とおくと
    f-1([0,1]) = {x ∈ ℝ | x2 ∈ [0,1]} = [- 1,1] ⁄= A
    である。
    f が単射であることの証明は以下の通り: 問題 2(e)より
    A ⊂ f-1(f(A))
    であることは分っているので
    f-1(f(A)) ⊂ A
    を示せばよい。
    x ∈ f -1(f (A )) ⇐ ⇒ f (x) ∈ f(A ) ⇐ ⇒ ∃a ∈ A s.t f(x ) = f(a)
    ここで f が単射だから x = a 、よって x ∈ A となる。よって
    f-1(f(A)) ⊂ A
    が示された。
  5. 問題 5:

    写像 f : X -→ Y A ⊂ X B ⊂ Y に対し次を示せ :
    f(A ∩f -1(B )) = f(A)∩ B

    解答 :

    y ∈ f(A ∩ f-1(B)) ⇐⇒ ∃x ∈ A ∩f- 1(B ) s.t. y = f(x) ⇐⇒ ∃x ∈ A s.t. y = f(x) and f(x) ∈ B ⇐⇒ y ∈ f(A ) and y ∈ B ⇐⇒ y ∈ f(A )∩ B