岩石は鉱物の集合体なので、岩石を理解するには、問題としている岩石がどのような種類の鉱物から構成され、 どのような組織をもっているかを、偏光顕微鏡観察などにより、調べなければならない。 ある種の堆積岩をのぞくと、普通の岩石は珪酸塩鉱物からなり、それらの鉱物のほとんどは、複雑な組成を示す固溶体である。 したがって、岩石を詳しく調べるには、偏光顕微鏡観察による鉱物種の決定だけでなく、それらの鉱物の化学組成の決定が望まれる。 現在、岩石中の鉱物の化学組成を求めるためには、 X線マイクロアナライザー(EPMAともいう)を用いたX線微小分析(マイクロアナリシス)が普通である。 それは、真空下で、分析目的の鉱物に細くしぼった電子線(径5μm前後)をあて、そこから発生するX線の波長と強度を測定することにより、 元素の種類と化学組成を求める手法である。 今回は、X線マイクロアナリシスについて、基礎的なことがらを説明する。
下の図に示したように、フィラメントFから蒸発した電子を103から104Vの電圧で加速し、 対陰極とよばれる固体Tに衝突させると、波長1~10Åの電磁波がTから放出される。 これがX線であり、透過力の強いふしぎな放射線としてレントゲン(W.K.Rentgen)が発見した(1895年)。
X線のスペクトルを、強度対波長の図(PDFファイルの左上の図)においてみると、 X線強度が小さくなだらかな丘の形をとる部分と、鋭くとがったピークを示す部分とがある。 前者を連続X線、後者を特性(固有)X線という。連続X線と特性X線では、X線の発生機構が異なっている。 X線マイクロアナリシスに用いられるのは、特性X線なので、連続X線についてはこれ以上ふれない。
大きな運動エネルギーをもつ電子線が、物質(原子)にあたると、 原子の最内殻(K殻)の電子を原子の外にはじきとばして原子をイオン化させる。 そうすると空になったK軌道に、もっと外側の軌道(例えばL軌道)をまわっていた電子が遷移する(落ち込む)(PDFファイルの右上の図参照)。 このとき、L軌道とK軌道のエネルギー差に相当する波長の電磁波が特性X線として放出される
K殻より外側の殻にある電子が、K殻に遷移するときに放射されるX線が、K系列X線である。(PDFファイルの図2.15参照)
同様にして、L殻より外側の殻にある電子がL殻に遷移するときに放射されるX線がL系列X線であり、 M殻より外側の殻にある電子がM殻に遷移するときに放射されるX線がM系列X線である(PDFファイルの図2.15参照)。 K系列→L系列→M系列X線の順に、波長が長くなる。
特性X線の波長は原子構造と密接に関係している。 モーズリーは、特性X線の振動数の平方根√νと原子番号Zとの間に直線関係があることを見出した(PDFファイルの図2.16参照)。
モーズリーはνの測定という物理的方法を初めて原子番号Zの決定に利用した。
以下は、分光結晶を用いてX線を分光させる波長分散型の装置を用いて、鉱物の微小部分を分析する(点分析とよぶ)場合の手順の概略である。
補正係数βは、ZAF補正により求める。ZAF補正とは