地質学の研究においては、走査型電子顕微鏡やX線マイクロアナライザーなど、 真空条件で作動・測定する装置を使用することが非常に多い。 したがって、真空の形成やその測定法、真空装置の取り扱い方について、一通りの知識をもっておく必要がある。
機器を真空にするには、普通、油回転真空ポンプと油拡散ポンプを組み合わせて排気する。 油回転真空ポンプは、単独では、低真空までの粗引き用として用いる。 真空度がある程度あがったならば、真空に引く経路を切り替え、装置内部→油拡散ポンプ→油回転真空ポンプ→外気、の経路で排気する(本引き)。 (真空蒸着装置PDF図参照)。 油拡散ポンプは、つねに油回転真空ポンプの吸気側(真空側)に直列につなげ、油拡散ポンプ単独で作動させることはない。
油拡散ポンプ(油拡散ポンプPDF図参照)は、ポンプ上部を水で冷却させて作動させる。 冷却水が流れなくなると、ポンプが加熱し、故障の原因となるので、冷却水がながれているかどうか常に注意する。 ガラス製の水銀拡散ポンプの場合、冷却水がとまっていることに気づいても、すぐ冷却水を流さないこと。 拡散ポンプのヒーターの電源を切り、ポンプ全体が冷却するのをまつこと。 ガラス製拡散ポンプが加熱した状態で、直ちに冷却水を流すと、ガラスがわれる危険性がある。
真空装置を終了させるときは、油回転真空ポンプの電源をきったら直ちに、 真空ラインのベント(通気孔)をあけて空気をいれ、油回転真空ポンプの吸気側を大気圧にすること。 これを行わないと、油回転真空ポンプの排気側は大気圧なのに、吸気側は真空状態なので、 油回転真空ポンプ内の油が、真空装置へと逆流してしまう。
圧力の国際単位(SI単位)は Pa(パスカル)であるが、真空度の表示においては、Torr(トル)、mbar(ミリバール)も、依然として用いられている。 圧力の単位の換算は、PDFファイル参照。
これら単位の覚え方は、1気圧(1 atm) = 1013 hPa =1.013 ×105 Pa ≒105 Pa したがって、1Pa ≒10-5 atm
1気圧(1 atm) =1013 hPa =1013 mbar = 1.013 bar ≒ 1 bar
したがって、1bar = 1/1.013 atm ≒ 1 atm
10~10-3Torr までの低真空度の測定には、ピラニー真空計(熱伝導真空計)をもちいる。 気体による熱伝導が、圧力に関係することを利用した真空計である。
本引きにより達成される高真空10-2~10-8orrの測定には、電離真空計が用いられる。
これらの真空計は、フィラメントを加熱するので、大気圧条件下で用いないこと。 フィラメントは焼失してしまう。 また、これらの真空計に表示される圧力は、ガスの種類に依存することに注意。
必ず指導者による講習をうけ、十分な知識を習得しておくこと。 その際、装置前面の操作パネルをスケッチし、それぞれのスイッチの名称と機能をメモしておくこと。
機器のマニュアルの必要部分をよく読んでおくこと。
何かトラブルが発生したときは、指導者に直ちに連絡し、自己流に対応・処置してはならない。
壁にある、電源ナイフスイッチをON
冷却水を流す。
装置のMain Power ON
油回転真空ポンプが作動し、ポコポコという排気音が2-3分続く。 この排気音が、鳴り止まないときは、真空経路のどこかに漏れがあることを意味する。排気音に常に注意すること。
通常、あら引きから本引きには、自動的に切り替わる。 本引きにかわり、しばらくたつと、走査型電子顕微鏡に加速電圧を印加できるようになる。
加速電圧を印加し、フィラメント電流を設定する。