分析試料の採取と調整(参考)

分析試料の採取

(木村健二郎著「無機化合物分析法」、岩波全書217、(1956)より抜粋・修正)

A 概説

分析試料には気体、液体・固体の種々の試料があるが、いかなる場合でも分析試料は原試料の品位を代表するひな形でなければならない。 もしそうでなければ分析自身がどんなに正確でも結果はまったく意味をなさない。 気体および液体試料では原試料は均一である ことが普通であるが、 固体試料の場合は不均一な原試料を取扱わねばならぬことが多く、試料採取には十分の注意が必要である。 ある一つの物質の組成を決定する必要がある場合は、分析試料は目的とする物質のみを含む純粋なものである必要がある。 問題の原試料から再結晶、蒸留、昇華などによって純粋な分析試料を得ることのできる場合は、 これらの操作を用いて試料の精製を行い、単一鉱物試料のような場合は肉眼や顕微鏡によって異種鉱物の混在をできるだけ避け、 かつ偏光顕微鏡やⅩ線回折装置を使用して分析試料が新鮮な単一の鉱物であることを確かめてから分析を行う。

岩石のように不均一な固体試料の平均組成を知ろうとする場合は、 原試料の各部分から合理的な方法で採集混合したやや大量の平均試料をつくり、 適当な大きさに砕いて混合した後、円スイ四分法によって分析試料を調製する。 まず全体を下図aのように円スイ形に積上げ、 つぎにこれを上から押しひろげて平な円形とした後bのように十文字式に

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四等分し、この四個の扇形のうち相対する二個たとえばc図のB、B′をとり出し、A、A′は残す。 A、A’を合せてさらに多少これを細かく砕いた後、得られた混合物について円スイ四分法を繰返す。 この操作を繰返すことにより試料の量を減ずるとともに粒子を細かくすることができる。

B 岩石試料の調整

特別な目的の場合を除いて通常は鉱物組成がなるべくむらのない、 かつ新鮮な部分を試料として採取する。 できるだけ転石などは避け、その場所に根の生えている岩石の内部あるいは新しい表面から試料を取る。 顕微鏡で調べ全岩石の代表と考えられる一片の標本が得られるならば必ずしも多数の部分から取った標本を混合して試料とする必要がない。 試料の採取が不適当であればいかに化学分析が精密に行われたとしても意味のないことになる。

斑晶がはなはだ小さく直径数mm程度でかつお互いに密接している岩石たとえば多数の安山岩、 玄武岩などは30g程度の標本でその岩石全体を代表せしめることができる。 斑晶が大きくかつ散在している岩石では50-100gは少なくともとらなければならない。 ペグマタイトのように成分鉱物に巨大なものがある時には数kgをも必要とする。

さてこのようにして得られた標本はまず適当な石(花崗岩がよい)でできた角材の上でハンマ-で1cm角位に小わりする。 集められる可能な限りの岩石小片をあつめ、蒸留水で洗い風乾させる(水溶性成分が含まれない場合)。 次にこれらの一部、少量をステンレス乳鉢ないしタンガロイ乳鉢(精密分析の場合)に入れ、 うえから乳鉢の棒でたたき、岩石小片を粉砕し、粒径を2mm以下になるよう粉砕する。

ステンレス乳鉢で粉砕する際、乳棒で壁や乳鉢の底を直接たたかぬよう、 また乳棒が壁や岩石塊と摩擦しあわぬよう注意する。 この点に十分注意すれば鉄の混入による誤差は事実上ほとんどないと考えてよいであろう。 粉砕した試料は紙の上に広げる。また残っている未粉砕の試料についても粉砕を行う。 すべての粉砕試料を紙の上に広げた後、円スイ四分法により試料の半分を取る。 残った粗粒粉末試料は、スチロ-ル棒瓶などに蓄える。 円スイ四分法により分取した試料をタンガロイ乳鉢にいれ、さらに細かく粉砕する。 粉砕したできた粉末を再び四分法により、分量をへらす。

次にこうして得た試料(2gほど)を少量ずつメノウ乳鉢に加えて、 これを丁寧にくり返してこすり合わせて微細粉とする。 メノウ乳鉢では乳棒でたたく動作をしてはいけない(試料にメノウ片が混入する)。 微細粉は指頭にてザラザラした感じがしなくなる状態である。 あまり粒が大きすぎると分解が不十分に終わることが多い。 しかし、あまり長時間すっていると、H2O(-)(吸着水)がふえ、 またFeOがFe2O3に酸化されるおそれも生じてくる。

このようにして微細粉とした試料は、ガラス製の小サンプルびん(バイアル)に蓄える。