気体状態の原子に光を照射すると、その原子に固有な波長の光が吸収され、基底状態にある原子は励起される。 この現象を原子吸光とよび、励起状態にある原子が基底状態に遷移するときに光を放つ原子発光の、逆の現象である。 吸収の強さは原子の数に依存するので、未知試料の吸光度を測定し標準試料のそれと比較することにより、定量分析が可能となる。 この分析法を原子吸光分析とよぶ。原子吸光分析は、微量の金属イオンの定量分析に威力を発揮する。
菱マンガン鉱(MnCO3)中のMnの原子吸光分析
試料 北海道稲倉石鉱山(熱水鉱床)産 菱マンガン鉱(MnCO3)
MnCO31モルは( )g
したがって、菱マンガン鉱 中のMnOの重量パーセントは ( )%・・・(A)
粉末にした試料0.03g前後を、薬包紙上に正確にはかりとる。
試料の重量 ( ) g
試料を200mlのビーカーにいれる。ビーカーにH2O 10 ml、6M HCl 10 ml加え、 電熱器上にのせて暖め、MnCO3を完全に溶解させる。 溶解したら、溶液を200 mlのメスフラスコにうつし、ビーカーをH2Oで何度も洗い、洗液をすべてメスフラスコにいれる。 最後にH2Oを加え、200 mlに調節する。
この溶液から、10 mlをホールピペットで分取し、100 mlのメスフラスコにいれる。 最後にH2Oを加え、100 mlに調節する。 Mnの原子吸光分析には、共存する元素の妨害はない。
標準試料溶液を作成するため、原子吸光分析用 Mn標準液(1000 ppm)を、 10 mlホールピペットで分取し、200 mlのメスフラスコにいれる。 H2Oを加え、容積を200 mlに合わせる。 この溶液のMn濃度は ( )mg / ml = ( ) ppm
この溶液から必要な量をホールピペットで分取し、100 mlまたは50 mlのメスフラスコにいれる。希釈法は、後述する。
原子吸光分光光度計を用い、標準試料及び未知試料の吸光度を測定する。 Mnの場合、空気-アセチレン フレームを用い、279.5 nmの吸光度を測定する。
グラフ用紙に、横軸に標準試料の濃度(Mn ppm)、縦軸に吸光度をとり、測定データを落とし、検量線(直線のはず)をえがく。 未知試料の吸光度から、その溶液のMn濃度を求めよ。
この100mlは、試料を溶解させ200mlに調節したあと、そのなかから10mlを分取したあと、それを希釈して100mlの定容にしたものである。
それゆえ、菱マンガン鉱試料中のMnO濃度 =( )% ・・・(B)
(A)、(B)の結果求めよ。
過マンガン酸カリ(KMn7+O4)のMnの原子吸光分析
試薬のKMn7+O4 2-3粒(0.0015gくらい)を、薬包紙(1/4に切ったもの)上に量りとる。
KMnO4の重量 ( )g
したがって、この中に含まれるMnの物質量は( )g
秤量したKMnO4を100mlのビーカーにいれ、H2Oを20ml加えて完全に溶かす。 この溶液を、100mlのメスフラスコに入れる。 KMnO4を溶かしたビーカーを純水で何度も洗い、 洗液をすべてメスフラスコにいれる。最後に純水を加えて100mlに調節する。
この溶液のMn濃度は ( )ppm・・・・・(C)
この溶液を、原子吸光分光光度計を用いて分析する。検量線から求められる濃度は
( )ppm・・・・・(D)
(C) と(D)の結果を求めよ。
市販の1mg Mn/1ml原子吸光分析用Mn標準液(1000ppm)をホールピペットで10ml 取り、200m1メスフラスコ中にいれる。 この溶液のMnの濃度は( )ppmである。
メスフラスコにH2Oを加え、200mlに合わせる。
この溶液のMnの濃度は( )ppmである。50mlのメスフラスコ4本、100mlのメスフラスコ2本、および5mlと10mlのホールピペット1本づつを用意する。 上の溶液から、0、5、10、15、20mlをホールピペットで取り、それぞれを下の表のように、50mlまたは100mlのメスフラスコにいれる。 最後にH2Oで50ml または100mlに調節すると下記の濃度となる。
(1ppm = 100万分の1 or 10-6 = 1×10-6g/1g)
いれる量 | メスフラスコ | 濃度 |
---|---|---|
0 ml | 50ml | 0 ppm (blank) |
5 ml | 100ml | ppm |
10 ml | 100ml | ppm |
10 ml | 50ml | ppm |
15 ml | 50ml | ppm |
20 ml | 50ml | ppm |
注 MnやFeを原子吸光分析する際には、溶液中の共存元素の妨害はない。 しかし、ほかの元素の場合、その存在が、分析目的元素の吸光度に影響を与える。 この現象を、干渉という。干渉の効果を消すために、分析溶液にSrやLaなどの干渉抑制剤をくわえるのが普通である。 また、標準試料と未知試料とで、酸の濃度を等しくする必要がある。