環論演習6

理学部 数理・自然情報科学科 西田憲司

演習問題

問1.

定理 2.2.7 (極大イデアルの存在)の証明を真似て次を示せ。
可換環 R  の積閉集合を S  とする。このとき, S ∩ 𝔭 = ∅ (空集合)となる素イデアル 𝔭  が存在する。
Hint;
  1. M の替わりに I  = {I : I  R  のイデアルで I ∩ S = ∅ を充たす } を考えよ。
  2. イデアル 𝔭  が素イデアル,を証明するために, a, b ∈ R, ab ∈ 𝔭  とし,更に, a ⁄∈ 𝔭, b ⁄∈ 𝔭  だったとして矛盾を出せ。

問2.

-

解答

問1.

(証明)

I =  {I : I  R  のイデアルで I ∩ S = ∅ を充たす } とおくと,0 ⁄∈ S  より, (0) ∈ I 。 したがってI ⁄= ∅ である。そこで, I の任意の全順序部分集合 J  = {Jλ} λ∈Λ  に対し, --   ⋃J  =   λ∈Λ Jλ  とすると, --J R  のイデアルである。なぜなら,       ⋃a,b ∈   λ∈Λ Jλ  とすると, a ∈ J  , b ∈ J ′λλ となるような, λ,λ′ ∈ Λ  が存在するが, J が全順序集合であるか ら, max  {Jλ,J λ′} を考えることができ(すなわち Jλ ⊂ J λ′ま た は  Jλ ⊃ Jλ′ ),今これ を J λ  としておくと, a, b ∈ J λ  である。ここで, Jλ ∈ I であるから Jλ  R  のイデアル なのでa - b ∈ Jλ  である。よって         --a - b ∈ J,  任意の r ∈ R  に対して ra ∈ J λ  であるから, ra ∈ J- でもあり J- R  のイデアルであることが示された。また,任意の λ ∈ Λ  に対し J λ ∩ S = ∅ であるから, --       (⋃       )J ∩ S =         Jλ  ∩ S =  ∅λ∈Λ でもあるから, --J  ∈ I である。 --J J の上界であることは明らか。以上から, I の任意の全順序部分集合が, I の 中に上界をもつことが示されたので, I は帰納的順序集合である。よって,ツォルンの補題により I には極大元 𝔭  が存在する。この 𝔭  が素イデアルであることを示すために a, b ∈ R, ab ∈ 𝔭, a ⁄∈ 𝔭, b ⁄∈ 𝔭  とする。このとき, 𝔭 ⊊  𝔭 + (a), 𝔭 ⊊ 𝔭 + (b)  であるから, 𝔭  の極大性により, (𝔭 + (a)) ∩ S, (𝔭 + (b)) ∩ S  はいずれも空でない。したがって, x + ra, x ′ + r′b ∈ S  となるような, x,x′ ∈ 𝔭, r,r′ ∈ R  が存在し, S  が積閉集合より, ′′′′′′(x + ra )(x  + rb) = xx  + xr b + xra + rr ab ∈ S  であるが,     ′x,x ,ab ∈ 𝔭  であるから, 𝔭  の元でもある。これは, 𝔭 ∩ S = ∅ であることに矛盾する。

□

問2.

-