環論演習1

理学部 数理・自然情報科学科 西田憲司

演習問題

問1.

  1. Z ∕7Z,  Z∕8Z の単数を求めよ。
  2. Rの元 xが,ある正整数 nに対し, xn = 0を充たすとき,ベキ零という。
    xがベキ零ならば 1 + xは単数であることを示せ。

問2.

例12の環 R = Z  + Z εに対し,単数の全体 R × を求めよ。

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解答

問1.

  1. Z ∕7Z について

    -- --  --  -- 2 ⋅ 4 = 8 = 1であるから -- --2, 4は単数である。同様に,
    -- --  ---  --3 ⋅ 5 = 15 = 1であるから -- --3, 5  は単数であり,
    -- --  ---  --6 ⋅ 6 = 36 = 1  であるから -- 6もまた単数である。単位元 -- 1はもちろん単数。
    したがって, Z ∕7Z の単数は -- -- ---- -- --1, 2, 3,4, 5, 6  である。

    Z ∕8Z について

    -- --  --  --2 ⋅ 4 = 8 = 0  より, -- --2, 4  は零因子なので単数ではない。
    -- --  --  -- 3 ⋅ 3 = 9 = 1  であるから, --3  は単数である。
    5 ⋅ 5 = 25-= 1  であるから, 5-  は単数である。
    -- --  ---  --6 ⋅ 4 = 24 = 0より, --6  は零因子なので単数ではない。
    -- --  ---  --7 ⋅ 7 = 49 = 1より, --7  は単数である。以上から,
    Z ∕8Z の単数は ---- -- --1,3, 5, 7  である。

  2. (証明) xがベキ零ならば, xn = 0をみたすような n ∈ Nが存在する。このとき, m  ≥ nなる任意の m  ∈ Nに対して  mx   = 0であるから,そのような m  を奇数としてとれば,
    eqnarray
    である。したがって, 1 + x は単数である。
    □

問2.

Rの単位元は1である。実際任意に Rの元 a + bε  (a,b ∈ Z ) をとれば,
(a + bε)(c + dϵ) = a + bε ⇐ ⇒ ac = a, ad + bc = b ⇐ ⇒ c = 1, d = 0
である。 a + bϵ ∈ R  (a,b ∈ Z )を単数とし, c + dε  (c.d ∈ Z ) をその逆元とすると,
ab + (ad + bc)ε = 1  であるから, ac = 1かつ ad + bc = 0である。今, a,b,c,d ∈ Z で あるから, ac =  1  より a = ア1 となる。逆に, a + bεa = ア1ならば, a - bε  を逆元にもつような単数であることがわかるから, R × = {a + bε | a = ア1, b ∈ Z } である。
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