民法4小テスト1
2006.10.3
一、次のアからオまでの記述のそれぞれについて、正しい場合は○、誤っている場合は×を付し、あわせて理由を述べよ。
ア. 債務者が行った第三者への不動産の譲渡行為を詐害行為として取り消す場合,譲渡契約が取消債権者の債権成立前に締結されたものであれば,移転登記が債権成立後にされたときであっても,取消権を行使することはできない。
イ. 債務者が債権者の一人に債務の弁済として金銭の支払をしたときは,その当時債務者が債務超過の状態にあったとすると,それによって他の債権者の取り分が減少することになるから,他の一般債権者との関係で詐害行為になる。
ウ. 不動産の引渡請求権を有する債権者が,債務者による第三者に対する目的不動産の処分行為を詐害行為として取り消す場合において,債務者の協力が得られないときは,当該第三者から直接自己に対する所有権移転登記を求めることができる。
エ. 詐害行為取消権を有する債権者が,被保全債権を第三者に譲渡したときは,詐害行為取消権は,債権の譲受人に移転する。
オ. 債務者による金銭の支払を詐害行為として取り消す場合,詐害行為取消権を行使することができる範囲は被保全債権額によって制限されるが,被保全債権の額を超える価値の不動産が処分されたときは,その取消しは総債権者の利益のために効力を生ずるから,受益者に価額賠償を請求する場合であっても,被保全債権額を超えて請求することができる。
二、Aは,自己所有の甲土地(時価8,000万円)について,Bに対する5,000万円の債務を担保するために抵当権を設定し,登記を経由した後,債務超過となった。CはAに対する6,000万円の債権を有する一般債権者であり,DはAに対する1,000万円の債権を有する一般債権者である。この事例に関する次のアからオまでの記述のそれぞれについて、正しい場合は○、誤っている場合は×を付し、あわせて理由を述べよ。
ア. AがBに対し甲土地を代物弁済し,抵当権設定登記が抹消された後,Cが詐害行為を理由としてAB間の代物弁済を取り消す場合,Cは,抵当権が把握していた担保価値と甲土地の価格の差額である3,000万円の限度で代物弁済を取り消し,Bに対し,3,000万円を価格賠償として請求することになるのであって,代物弁済全体を取り消すことはできない。
イ. AがDに対し甲土地を代物弁済し,Cが詐害行為を理由としてAD間の代物弁済を取り消す場合,Cは,抵当権が把握していた担保価値と甲土地の価格の差額である3,000万円の限度で代物弁済を取り消し,Dに対し,3,000万円を価格賠償として請求することになるのであって,代物弁済全体を取り消すことはできない。
ウ. AがEに対し甲土地を代金1,000万円で売却し,Eが所有権移転登記を経由した後,Cが詐害行為を理由としてAE間の売買を取り消す場合,取消しの効果がCE間で相対的にのみ生ずるとすると,Eは,Cからの請求に対し,1,000万円の返還と引換えでなければ所有権移転登記の抹消登記手続をしない旨を主張することができる。
エ. Aは,Eに対し甲土地を代金1,000万円で売却し,Eは,Fに対し甲土地を転売した。Eは購入当時債権者を害すべき事実を知らなかったが,Fは転得当時債権者を害すべき事実を知っていた場合において,CのFに対する詐害行為取消権の行使が認められたときは,取消しの効果がCF間で相対的にのみ生ずるとすると,Fは,甲土地を返還しても,Eに対する担保責任を追及することはできない。
オ. Aは,Eに対し甲土地を贈与し,Eは,Fに対し甲土地を転売した。Eは購入当時債権者を害すべき事実を知っていたが,Fは転得当時債権者を害すべき事実を知らなかった場合において,CのEに対する詐害行為取消権の行使が認められ,CがEから目的物に代わる金銭を受領し,これをAに返還する債務とAに対する債権とを相殺したときは,Cは,優先弁済を受けたことになるが,Dは,このCによる詐害行為取消権の行使を詐害行為として取り消すことはできない。