租税根拠論

  • 課税根拠論は、租税を支払うことを国民に納得させ、国家に十分な収入をもたらすことを保証するためのイデオロギー(思想)である。課税根拠論は歴史的に二つが主張されてきた。
    1. (1)租税利益説
        国民が支払う租税は、国家が国民に与える利益(行政サービス)に見合う対価であるという説。いいかえれば租税は行政サービスの価格だというのである。商品経済的(市場的)な説明であり、資本主義社会に適合的な考え方である。アングロサクソン系の財政論で主張されてきた。ホッブスやロック以来の社会契約説的国家観(国家は市民の契約により成立するという説)が背後にある。問題点は、租税が国家権力により強制的に徴収されるものであることと、利益(行政サービス)が数量化できないこと、にある。
    2. (2)租税義務説
        国家は、人間にとって必然的存在であり、全体利益を追求する家父長的保護機関であるという国家有機体説による考え方であり、租税は、国家の存立に必要な経費を賄うための賦課であり、国家有機体(共同体)の構成員である国民が、それを支払うのは当然の義務であるという説。イギリスに対し後発国だったドイツや現代国家において主張される。大きな国家活動と重い租税が背景にある。
  • 利益説と義務説の相互補完
    租税の根拠としては、どちらかが正しいというのではなく、両面あると考えるべきである。一般的利益に対し一般的な対価ないし負担という点でみると利益説の説明が有効であるが、その負担は法により義務づけられており、個人が利益なしといって拒否できないという点では義務説である。