公債負担論

  • 古典派(スミスほか)――公債有害説
    政府支出を不生産的とみるので、その経費を賄う公債は、国内資本を減少させ、元利払いのための将来の増税が資本蓄積を阻害するとした。 将来世代への負担転嫁説。
  • ドイツ財政学――条件つき公債有益説
    国家支出は生産的だと考えるので、公債は一定の条件のもとでは有益だとする。 すなわち、公債が投資的経費を遊休資金で賄うならば、国民的生産力を高めるために有効であり、高められた生産力で将来の利払い負担を相殺できる、と。
  • ケインズ派――公債有益説
    公債の全面的な利用を主張。公債は、過剰な貯蓄を吸収し、政府支出をつうじ有効需要を刺戟し、国民所得を増加させる、また資本蓄積を促進する、と。 さらに、将来元利償還というかたちで将来世代に負担が残るがそのために税負担する納税者と、 償還を受ける公債保有者とは同じ世代に属するので、両者の間で所得再分配が生じるにすぎず、世代全体として負担の転嫁がなされたとはいない、 と負担非転嫁論を主張した。
  • 1980年代以降は経済学の主流がケインズ経済学から新古典派経済学へ変わったことに対応して、 古典派的な将来世代への負担転嫁論が主流化しているが、公債負担論は、それぞれ前提や視点が異なり、議論が錯綜している。