前回は、社会調査とは何か、社会調査をおこなう際の心構えについて、考えてきました。今回は、社会調査の中でも特にフィールドワークについて考えていくことにします。
[1] フィールドワークとはどのような調査のことなのでしょうか
 フィールドワークとは、そもそも特定の調査法を指すものではありません(盛山 2004)。フィールド、つまり「現場」に出かけてデータを集めるのであれば、それはすべてフィールドワークと呼ぶことができます。そのため、本来の意味を考えてみると、単にフィールドワークと言った場合、これまで挙げてきた社会調査はすべて含まれることになります。しかし一般的にフィールドワークと言った場合、もう少し狭い意味でこの言葉を使っています。佐藤(2002)は、そうした違いを明確にするために、広義のフィールドワークと狭義のフィールドワークに分けています。
 広義のフィールドワークとは、前回お話しした調査全てを含みます。つまり、調査票調査、聞き取り調査、参与観察、ドキュメント分析、既存統計資料分析など、社会の「現場」を調べるすべての調査のことを指します。一方、狭義のフィールドワークと言った場合、参与観察と聞き取り調査(特に密度の高い調査に限る)のみを指します。
 この講義では、特に狭義のフィールドワークを取り上げて考えていきたいと思います。以後断りがない限り、フィールドワークと言った場合、狭義のフィールドワークを指すことにします。
 さて、フィールドワークとは、具体的にどのような調査法なのでしょうか。具体的に見ていくことにしましょう。まずは、参与観察から説明することにします。